その道の第一人者や
専門家になり、
地球の未来に貢献していきたい
ここでは、カーボンニュートラル社会の実現へ向けて、「CCS」「水素」「洋上風力」という注力分野におけるJOGMECの新たな挑戦を担う職員たちの座談会をお伝えします。
Profile ※部署名は取材時点の所属となります
- 事務系総合職
- エネルギー事業本部
CCS事業部 企画課 課長
髙梨 真澄法科大学院(国際資源/環境政策)
修了 - JOGMEC前身の石油公団に入団。産油国技術者研修やファイナンス支援に係るHSE審査業務に従事。長男出産後の2008年に退職し、米国の法科大学院に留学すると共に、現地で次男を出産。2012年にJOGMECに復職し、技術ソリューション事業、デジタル推進事業、CCS・水素事業部など、新規部門の立上げや技術企画に関わる。2024年4月より現職。現在は、国内のCCS事業支援スキーム、CO2の越境輸送、炭素クレジット等について経済産業省の制度設計支援に携わっている。
- 技術系総合職
- エネルギー事業本部 水素事業部
水素企画課(併)
メタン対策タスクフォース 担当調査役
下内 真大学院環境化学プロセスコース 修了 - 大学院修了後、大手エンジニアリング会社にてガスプラント事業や液化天然ガス製造事業に従事。2019年JOGMECにキャリア入構。施設系の技術者として水素、アンモニアなどのFS事業や他の技術実証事業に従事。現在は、「炭素集約度(CI)算定手法のガイドライン」の作成や、経済産業省が進める「水素社会推進法」の重要施策である価格差支援制度の評価支援準備などに携わる。
- 技術系総合職
- 再生可能エネルギー事業本部
洋上風力事業部 調査課
梶原 勘吉大学院海洋科学技術研究科
海洋資源環境学専攻 修了 - 大学で地質学を学んだ後、大学院に進学し海洋・海底資源探査を研究。学生時代にJOGMECが建造した海洋資源調査船「白嶺(はくれい)」に乗船し、海底の地盤調査を実施したことも。2023年JOGMECに新卒で入構し、洋上風力事業部に配属。現在は、物理探査の知識を活かして、洋上風力発電のための海底地盤調査の計画・施工管理・データ整理業務をはじめ、洋上風力全般に関する情報収集・発信などに携わる。
カーボンニュートラル社会を実現していく現場の最前線
―CCS、水素、洋上風力を担う皆さんの仕事について教えてください。
髙梨:今、カーボンニュートラルの達成や産業セクターの脱炭素化に欠かせないものとして世界中で検討されていることの一つに「CCS」があります。「CCS」とはCarbon dioxide Capture and Storage、化石燃料等を使用する際に排出される二酸化炭素(CO2)を分離して、地下深くに圧入し閉じ込める技術。その「CCS」の社会実装を国内外で推進するのがCCS事業部であり、その中で私が所属する企画課は、経済産業省の様々な制度設計を支援する役割を担っています。日本におけるCCS事業の商業化に向けて、どのような支援策をつくっていくか、日本のCO2を海外に越境輸送する場合の法的枠組みをどうするか、などについて、海外動向の調査や政府との議論を進めているところです。
検討すべき課題は山のようにあるため、それを一つずつ、つぶしていく気の遠くなるような作業ですが、課のメンバーとともに、日本の政策、その最前線で制度設計に携われるのが非常に面白いところです。また課長としては、メンバー一人ひとりに専門家として育ってもらうことを日々意識しています。- 下内:私が所属する水素事業部は、次世代エネルギー源として期待される水素はもとより、水素から合成されるアンモニア、合成メタン、合成燃料事業の促進を担い、バリューチェーン構築に向けた多面的な取り組みを、経済産業省と共に行っています。
私自身は水素企画課において、事業における温室効果ガスの評価、エネルギーの環境価値の可視化へ向けた「CIガイドライン第3版」(※1)の策定を担当しています。水素・アンモニア・合成メタン・合成燃料は、エネルギー由来の温室効果ガスの排出量削減に向けた事業であるため、どのように効果を示すかは、事業を理解し推進する上で重要な指標だといえます。 - 髙梨:もう第3版になるんですね。
- 下内: CIガイドライン第1版に着手しようとなった4〜5年前は、まさにエネルギーの環境価値を炭素集約度(CI)で評価するという議論が開始されたところでした。しかし世界各国では考えの整理が始まっているのに対し、日本ではそのような動きがなかったため、まずは考え方だけでも事業者が使いやすいように整理して発信しようと、当時の上司が判断されて、取り組み始めました。高梨さんと一緒に10人くらいのチームでゼロからやりましたよね。
- 髙梨:あの頃を考えると第3版になるなんて、想像以上に、今、花開いてていますし、あのときのゼロからの挑戦が今につながっているんですね(笑)
梶原さんが所属している洋上風力事業部は注目度も高いですが、新しい部として様々なチャレンジが必要なのでは? - 梶原:はい。洋上風力事業部は、令和5年度より導入された「日本版セントラル方式」(※2)に基づき、国による再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業者の公募を実施していくためのデータ取得、具体的には海底地盤及び風況、気象・海象などの調査を行うために新設されました。洋上風力は取り組みが始まったばかりのため、JOGMECにとっても、日本にとっても新しい挑戦の連続といった感じです。
その中で私は、主に海底地盤調査を担当しています。自分の専門である物理探査の知見を活かして現地調査の計画立案から契約手続き、施工管理、取得したデータの検証・整理や、DPF(※3)の構築など一連の業務に携わっています。専門外のボーリング調査についても、周囲のアドバイスを受けながら業務を推進しています。
データ利用者の意見を反映した調査となるよう、調査会社、他国の政府機関や企業へのヒアリングを行うとともに、発電事業者に対する説明会などの発信も担当しています。 - 髙梨:梶原さんは2023年入構ですよね。若手でそれだけいろいろなことに挑戦できるのは、やりがいも大きいのでは?
- 梶原:はい。1年目の時から、新規案件や前例のない調査の計画の担当を拝命していました。上司に言われたときは、思わず「自分が考えていいのですか?!」と言ってしまいましたが、年次に関係なく、どんどん任せ、チャレンジさせてもらえる環境はとても恵まれていると思います!本当にできるのだろうか、と、不安になることもありますが(笑)、上司にはいつでも思い切ってやってみろと言われるので、いつでも前向きに取り組んでいます。
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(※1)CIガイドラインとは、LNG・水素・アンモニアの温室効果ガス排出量及びCarbon Intensity算定のための推奨作業指針。脱炭素燃料開発のための環境整備の一環として、LNG、水素・アンモニア、合成燃料製造に伴うGHG排出量の算定手法と、単位(エネルギー含有量又は重量)あたりのGHG排出量を示したCarbon Intensity(CI:炭素強度)の算定手法についての考え方を示したもの。
(※2)日本版セントラル方式とは、同一海域で重複した調査を実施する非効率性や、それに伴い地元漁業における操業調整等の負担が生じている課題を解消するために、洋上風力の案件形成の初期段階から政府が主導的に関与し、より迅速・効率的に必要な調査を実施する仕組み。現在、JOGMECが調査の担い手となり、この調査結果を用いて発電事業者は事業計画の検討を行う。
(※3)DPFとは、セントラル調査で取得したデータを、国による再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業者の公募や、その公募で選定された発電事業者に提供するための、データプラットフォームのこと。担う仕事の醍醐味や面白さ
―皆さんにとって、現在の仕事のやりがいや面白さは?
- 梶原:これからの洋上風力発電の多くは、私たちが手掛ける基礎調査の結果をもとに、「国による促進区域の指定や発電事業者の公募」「選定された発電事業者による詳細調査・建設工事」を経て「運転開始」となります。つまり日本における洋上風力の“はじまり”に携われることこそが醍醐味だと言えます。
私がJOGMECに入構したいと考えたのも、まさにこの“はじまり”に関わりたいという思いからでした。 - 下内:たしかに、他では関われないことですね。
- 梶原:いろんなことに興味があったのでどの分野にいっても面白くやれると思ってはいました。でも、初期配属で洋上風力事業部に行けると分かったときは、うれしかったですね。なぜなら、洋上風力の日本版セントラル方式の導入年と私の入構年が同じであり、その意味でも“はじまり”だと思ったので(笑)。
- 髙梨:CCSも水素も洋上風力も黎明期。どういう政策にしていくか、どのような法案にすべきか、最先端の政府間議論など、「1年目からこんな現場に立てるの!?」と驚かれるかもしれませんね。変化に柔軟に対応していくのがJOGMECなので、つねに挑戦の歩みでしたが、今は比べ物にならないくらいドラスティックな変化が起きていると感じます。若手も、キャリアも、みんなでゼロからつくることに参加できる、それが今だと思います。
- 梶原:本当にそうです。私自身、学生時代には、国のつくった政策を粛々と実施するのがJOGMECというイメージを持っていましたが、実際は違いました。よい意味で業務のイメージが塗り替えられました。
- 下内:キャリア入構ですが、私も同じような経験があります。エンジニアリング会社で8年くらい海外に駐在し、エネルギービジネスに携わっている中で「日本のために働きたい」と思うようになり、JOGMECへ転職しました。前職のときから独立行政法人として国のために働くというJOGMECの存在意義は知っていましたし、それで入構を決めたということもあります。しかし実際に入って、政策に関わることができるのかと正直驚きました。形にしていくだけではなく、国の政策の一端を担う仕事があることを知り、その責任の重さも実感しました。
- 髙梨:新分野においては、政府との議論を通じてポリシーメイキングの過程にはいっていける。それぞれの分野のコアであり続けることで、その道の専門家になれる!これは新領域に携わる大きな醍醐味だと思います。
- 下内:髙梨さんのお話に少し加えさせていただくと、カーボンニュートラル社会の実現へ向けた変化への対応は、新分野だけではなく、石油や天然ガスなど、日本のエネルギーセキュリティにおいて欠かすことのできないエネルギー領域においても必要になっています。事業環境が大きく変化するなかで、つねに新しいことを掴んでいきながら、それに基づいてこれからどう取り組むか、何を推進していくか、環境対策はどうあるべきか、などを考えて、政府や国内外の企業の方々など様々な関係者と活発に議論していくことが新領域だけでなく、どの分野においてもJOGMECには求められています。JOGMECに入ったらどの領域を担当することになっても、変化の先端に身を置き、新たな道筋をつくっていくことに関与できるのではと思います。
―各分野においてJOGMECが発揮できる強みとはどのようなことがありますか?
- 髙梨:JOGMECは日本で唯一、地下評価の専門知見を有する政府機関です。石油ガス開発における50年以上におよぶノウハウの蓄積が、CO2を地中に埋めるCCS技術でも強みとなります。また、JOGMECは地下技術に限らず、地上の施設技術の専門家、そして私たち企画課のようなプロジェクトの国際動向や法令制度調査等を専門とする事務系職員など、幅広い専門人材がいることも強みであり、新たな事業推進力につながっていると思います。
- 梶原:私もそう思います。技術系では地質、物理探査、風況、海象など。事務系では法務、契約、企画など。多方面のスペシャリストが揃っているからこそ挑戦ができるのだと思います。
- 髙梨:洋上風力事業部もいろんなメンバーの力を結集させて推進しているんですね。
- 梶原:はい。調査業務一つをみても、JOGMECが長年培ってきた地質調査や物理探査の知見は、洋上風力における海底地盤調査にも不可欠なものです。特に海洋調査は、漁業者との調整、船舶調査の施工管理、海洋環境の把握、作業基準の判断、調査上の留意点、許認可申請など、海ならではの難しさもあります。それらに対応していけるのは海洋調査経験を通じて蓄積されたノウハウがあるからです。そして技術系だけでなく、契約、法律、会計、財務などの視点からも調査計画や施工管理をしていく必要もあるため、様々な専門人材の力は大きいと感じます。
- 下内:長年、事業の技術面や財務面での事業リスクを把握、対処した上で、支援を実施してきたJOGMECだからこそ、支援を実施するための専門人材を育成する環境も備えていますよね。実際に現場でのOJTはもちろん、教育制度なども含めて非常に充実しています。また、私のように他の会社を経験してから入ってきた人にも平等に活躍する機会が与えられていることも強みの一つではないでしょうか。
- 髙梨:そうですね。確かに、新卒入構職員、キャリア入構職員、他の機関や民間企業からの出向者、年次、専門、バックグラウンドの異なる多種多様なメンバーがいますが、議論するときも、挑戦機会や成長支援の面においても、平等だしフラットですね。
- 梶原:洋上風力事業部も、肩書や年次に関係なく全員で一緒に考える雰囲気があります。実際、重要な場面で私のような若手の意見を採用いただくこともあります!
民間企業が参入困難な初期調査や先進的事業を行う組織のためか、チャレンジ精神の持ち主が多く、前例がないことでも、誰のアイデアであっても、物事をフラットに捉え、より良いものを皆で一緒につくっていこうとする姿勢や団結力があることもJOGMECの強みだし、誇りに思っています。
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未来へ向けて、いっそう重要になるもの
―JOGMECの未来について、考えていることを聞かせてください。
- 下内:これまで以上に、エネルギーを取り巻く環境の変化に柔軟に対応していかなければなりません。そのためには、国内外にネットワークを張って、グローバルに展開するステークホルダーと関係を構築し、最新の現地の動向も把握できるようにしておくことは重要だと思います。
- 髙梨:その意味では、CCSでも海外動向調査は必須なので、海外出張は頻繁にあります。
- 梶原:洋上風力事業部のメンバーは、ちょうど今、ドイツ、ベルギーに行っています。私はこの前、フランスに行ってきました。
- 下内:僕も先週フランスでした。
- 髙梨:水素のことで?
- 下内:今、水素に加えて、LNGにおける環境対策政策の一つであるメタン排出削減にも関わっているため、欧州や米国の会議に呼ばれ、政府関係者、オイルメジャー、科学者らとともにディスカッションをすることがあります。多いときは、月2〜3回は海外へ行っていますし、最近もオンラインで欧州や米国の政府機関と議論をしたりします。
- 髙梨:下内さんは前職も含めて海外経験も豊富だと思いますが、グローバルに情報を集めるにも、議論をするにも、どのような力が大事だと思われますか?
- 下内:ひとことでいえば、「自分の考えをもつ」ことでしょうか。
資料をしっかりと準備して、考えを発信はすることは重要ですが、ラウンドテーブルやパネルディスカッションの機会では、想定しない質問等が出たときに、自分の考えに基づいて発言することが必要です。国内であれば、能ある鷹は爪を隠す文化といいますか、当然あの人も考えているだろうと推し量ることも多少ありますが、海外では、考えをもって発言できていることが問われると思います。仮に答えは出せなくても、自分はこういう分析をして、こういうことが課題だと思っています、と言えるかどうか。自分の考えをもって発信できない人は、信頼を得るのは難しいと思います。また、仕事場だけじゃなくて、レストランへ食事に行って全く違う話題が出たときにも同様です。さまざまなテーマについて、自分の考えを発信することで、おもしろいやつだな、となる。そうすると、個人宛ての連絡がどんどんきますし、会議に呼ばれたり、意見を求められたり、ネットワークが広がっていきます。 - 梶原:私も、自分で考えることは大事だと思っています。新しい事業を推進するためには、前例にとらわれず一人ひとりの考えやアイデアが大事だし、そんな人たちが集まって色々な議論をしていくことで新しいものが生まれると信じています。ただ下内さんのお話を聞いて、これからもっと頑張っていかなければと思いました。
- 髙梨:そうですね。JOGMECのメンバーには世界で活躍してほしいので、自分の今の専門、今関わっている領域で知見を積んで、自分の意見や考えをもって発信できる人になってほしいと、私も思っています。そうすることで、個の知名度があがってきて、JOGMECにはこの人がいる、となると、結果的にJOGMECのブランドになる。国内・海外の政府や企業から期待される専門家がいる、JOGMECはそのような法人であってほしいと思いますね。
- 下内:それはありますね。
- 髙梨:私が今、課長として目指しているのは、課のメンバー一人ひとりにそれぞれの担当分野での専門家になってもらうこと。熱意のある人にたくさんチャンスをつくっていきたいと思います。たとえば、講演の依頼が多いときは月3回くらいあるのですが、できるだけ私ではなくて若い人に出てもらえるようにと考えています。そうすると、その人の名が知れていく。自分の能力の斜め上くらいの高めの球がつねにとんでくると自分の能力をあげなきゃいけないから、いつのまにか自分が成長しているという状態にもっていけたらと思っています。
海外からすれば、政府とJOGMECが一体としてみられている面もあるので、政府が来てくれなくてもJOGMECが来てくれたら代弁してくれると期待されている。そんな舞台に立てることは他にはないので、この環境を活かして、どんどん成長していってほしいと思います。メンバー一人ひとりの力がグローバルな舞台で花開き、その総合力で未来づくりに貢献できる、そんなJOGMECを皆でつくっていきたいと思います。
髙梨:JOGMECでは仕事と生活の調和を支援する環境づくりも進んでいます。「勤務時間選択制」「テレワーク制度」「配偶者同行休業制度」など、様々な制度が整っており、私が退職して海外留学をしたり、テレワーク制度がない中で子育てしていた頃と比べれば、今の方々がやや羨ましいです(笑)。
大きく変化するエネルギー政策の最前線で活躍したいという意欲ある方にとって非常に恵まれたフィールドや環境が広がっています。ぜひチャレンジしてください。
下内:独立行政法人なので少し硬いイメージがあるかもしれませんが、実際は違います。年次や役職、部署を超えて、いつでも誰とでもオープンなディスカッションができます。また、海外出張や部署異動、人事交流、ワークスタイルなどもゆるやかと言いますか、個別事情や状況の変化に応じて柔軟に対応していくカルチャーがあります。知や経験のダイバーシティを最大限に活かしあうところがJOGMECの大きな魅力の一つだと思います。
梶原:JOGMECには資源・エネルギーに関する様々な分野があります。自身の専門や経験が、思いもよらない分野で役立ったり、他分野と混ざる化学反応で新たなものが生まれたりすることも多くあります。だからこそ、自分の今やっている研究や業務にとらわれず、広い視野で自分の活躍できる場面を考えてほしいです。そして様々な事業に関わるチャンスに溢れるJOGMECで、多彩なメンバーと共に新しい世界へ挑戦することを楽しんでいただきたいと思います。