Profile
大学時代は、金属資源・石油資源の探査から生産及び素材生成など、資源全般を対象に幅広く学ぶ。大学院までの研究室では、鉱山廃水に関わる研究を担う傍ら、JOGMECと関わりの深い選鉱分野にも携わり、金鉱石のリーチングに関わる分野も研究した(米国ネバダ州で2カ月のインターンも経験)。入構後は環境部署を経て、3年目には金属資源開発に関わる技術職として活躍。ペルーへの出張・出向なども経験し、現在は技術職ながらプロジェクトマネージャーのように横断的に業務へと携わる。オフには機構内のテニス部に所属し、部活動をリードしている。
仕事内容
コア事業の金属資源開発を、
4つの業務からリード
JOGMECは、金属資源開発に力を注いでおり、探査からリサイクルまでの各段階において技術開発事業を推進しています。私は、技術課で大きく四つの業務を担当しており、その一つは「低品位ニッケル鉱に対する選鉱フローの開発」です。ニッケルは、主にステンレス材料や電池材料に使用される貴重な鉱物資源です。ただ、東南アジアなどで採れる鉱石はニッケル含有率が低いものも多く、いかに効率良く低コストで選り分けるかをテーマに、試行錯誤しています。二つ目は「製錬所のリサイクル原料比率をアップさせる技術開発」で、これは主にパソコンの廃基板から銅や貴金属を効率良く取り出し、完全循環型リサイクルを目指すもの。これらは、金属資源技術研究所(秋田県小坂町)を一部活用し実験が行われます。当研究所は、選鉱や製錬に関する試験設備を保有しており、私は出張して実験に参加しますが、実験の多くは現地の技術者に担当いただき、私は本部で上がってきたデータを分析して、次の実験依頼や開発企業との契約事務などの業務も行っています。三つ目は「探査案件の選鉱評価」で、海外のパートナー企業との連携のもと、適切な手法で選鉱試験が行われているかをチェックし、経済的に開発する価値のある鉱山かどうかを評価しています。四つ目は「機械学習を用いた浮選成績の予測」です。“浮選”とは浮遊選鉱のことで、銅などの非鉄金属を泡につけ取り出す手法です。これまでは作業員の経験や勘に頼る部分が多かったのですが、科学的に精度を高めるべくAIなどの技術活用を先駆けて取り組んでいます。
仕事のやりがい&印象に残るエピソード
公共性の高い仕事に
溢れている点が魅力。
海外出向で大きな達成感を
手にする
JOGMECは、国策の実行機関としての業務がメインです。私も技術職でありながら、どの業務においても円滑に仕事を回していくプロジェクトマネージャーの役割を担っています。業務のステージが高く、公益性の高い仕事に溢れている点がJOGMECの魅力でしょう。他方で、業務の多くは基本的に民間企業では手を出せない技術的・経済的ハードルが高いものが占めています。例えば、自身の努力や周囲と協調しての試行錯誤の積み重ねにより、難処理鉱石の選鉱方法が見えてきた、そんなときにはブレークスルーの予感がしてやりがいを感じます。
また、海外への出張や出向が多いのもJOGMECの特徴で、私は特にペルーと縁があります。入構2年目に初めてペルーに出張し、ペルー政府の職員と、過去の鉱山開発活動によって鉱害問題が引き起こされている現場を調査しました。そこで汚染された河川の周辺に住む住民が調査に来た我々を見つけ、「汚染問題を改善してほしい」と本気で訴えてきまして、環境負荷を抑えるペルー政府への提言も含めて、世界に貢献できる大切な仕事だと痛感しました。
最も印象に残っているのは、2017年から2年間のペルー出向です。その時には、高地4000mの鉱山現場で、選鉱場の操業成績を改善させる業務を担当しました。日本では経験できない高地の環境に慣れるまでは大変でしたが、顧問という役職を与えられ、ペルー人に指示しながら日々業務改善に当たりました。時には、ペルー人幹部と意見が衝突することもありましたが、山中のラボで行なった基礎的研究のデータを、出向前の語学研修で習得したスペイン語で提示し、納得いただくことができて、互いに絆を結びながら、銅や亜鉛の回収率アップに成功したのです。年間で数億円レベルでの収益アップを達成させたときは、ペルー人とも喜びを分かち合い、大きな達成感を得ることができました。
今後の目標
世界的な視野から
資源政策に貢献。
事業を推進する
人間力を持つ存在に
現在も少し関わっているのですが、今後はJOGMEC出資案件の技術審査やモニタリングと、獲得した権益の高収益化を図る仕事に携わりたいと思っています。例えば、海外企業や日本の関連企業の開発計画を精査し、可能性のある案件には積極的に出資することはその一つです。出資には慎重なリスク判断が伴いますが、将来的にレアメタル系の金属資源を確保し、日本に安定供給されるような道筋を立て、日本企業ともWIN-WINの関係を構築したいですね。
技術的・経済的ハードルが高い職務が多々あるJOGMECにおいて、技術職はアカデミックな追究、もしくは現場の追究のみでは不十分で、双方を高水準で備えたバランスと、大学や民間の役割をうまく引き出し、事業を推進する人間力が必要不可欠です。私自身も、学問と実務のバランスが取れた人間力を持つ存在へと、成長していきたいと思います。
JOGMECを選んだ理由
学生時代は、鉱山廃水に関わる研究(環境分野)や一部金鉱石のリーチング(選鉱分野)に関わる研究をしていた関係もあり、資源・エネルギーに興味が湧きました。大学の授業にJOGMECの寄付講座があったり、文献にもJOGMECと記載されていたりと、資源業界に存在感を発揮する独立行政法人として強く認識していましたね。就活では、資源業界を中心に仕事を探した結果、自然にその中核となるJOGMECが一番の選択肢となりました。海外や地方での勤務が多くなりがちな民間企業と異なり、都内で長く働ける環境も魅力でした。
未来の仲間への
メッセージ
就職活動では、企業研究や自己分析を通して、「自分がこの会社に入ったらどんな仕事がしたいか」「どういったキャリアを歩みたいか」などのイメージを深めることがとても重要です。入構前は、世界的な資源・エネルギーと各種技術への興味、何より高いステージで頑張りたい気持ちを、入構後はアカデミックな研究姿勢と現場対応力、語学力すべてをバランス良く向上させようという意欲が大切になると思います。